物価が上がらないと良くない?貿易と消費行動から考えてみた

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この記事の所要時間: 350

物価水準を他の先進国並の2%を目標にするという理由で取られている金融緩和政策。すでに長い間にわたって続けられているものの、消費の中心となる若い世帯の人口の減少、所得の停滞が続く中で果たして意味があるのでしょうか。失業率が以前より改善され、求人倍率も1倍を超えても、物価水準が目標に到達しない理由を考えてみました。

物価が上がると経済は良くなる?

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出典:pixabay

物価はモノの値段のこと。お金とモノの交換取引において、モノの価値がお金の価値より上がれば物価は上昇します。モノを売る事業だとモノの値段が上がれば売り上げが増えます。製造する事業だと出荷額が増えるでしょう。モノの流通を通じて出回るお金が増えると経営が安定し、仕事を増やして人を雇うお金もできるでしょう。

しかし、モノの価値がお金の価値より上がりすぎればどうでしょう。いくらお金があってもモノを買えないのであれば紙くずにすぎません。モノの価値が上がりすぎないように常に沢山のモノが豊富にお店に並ぶように製造能力を高める必要があり、製造能力を高めるために新しい設備を買ったり、人を雇ったりする必要が出てきます。

物価が上がる要因

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物価が上がる要因として次のことがあります。

  • モノ不足
  • 金余り
  • 賃金の上昇、等

モノ不足は、国内で製造できず輸入に依存しているエネルギーや原材料が海外の何らかの事情で国内に入ってこなくなった場合に起きます。昭和40年代に中東戦争で産油国から原油の輸入が途絶え、オイルショックが起きたことなどが例として挙げられます。

金余りについては、極端な金利低下で融資が過剰に行われた場合に起きる現象で、昭和の終わりから平成の初めにかけて、「土地の値段は下がらない」という土地神話を盲信し、土地を担保にすればいくらでもお金が借りられる時代がありました。いわゆる「不動産バブル」が例として挙げられます。

物価が上がるのに伴い、賃金やお給料も上がるのであれば実質的な害はありません。賃金やお給料も上がり、将来の生活に希望が持てるようになれば、それに伴ってより値段の高いモノを買うようになり、ゆるやかに物価が上がっていくでしょう。

貿易で物価は上がる?

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日本は世界第三位の経済規模を持つ国ですが、原油や天然ガスなどのエネルギー、お米を除く農産物の多くを海外から輸入しています。特に原油や天然ガスといったエネルギーが国内に入ってこなくなると物価上昇につながり、順調な経済活動に支障が生じます。

お米を除く農産物に関しては、国内の農業を改革することで生産能力を上げる余地はあります。近年はTPPなど自由貿易の新しい枠組みが議論されてきており、輸入品の価格を押し上げる作用がある関税の割合を段階的に下げていくことにコンセンサスが得られつつあり、そうなれば値段の安い海外の農産物がこれまで以上に安く買えることで物価が下がるかもしれません。

物価が上がらない?消費行動の変化

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物価水準を他の先進国並の2%を目標にするには、暮らしに実害が出ないように賃金やお給料といった家計の収入の部分も増えて、みんなが将来に希望を持てるようにする必要があります。しかし、高度経済成長の時代と違い、日本の周りには経済発展著しい国が沢山できて常に競争があります。必要な投資を行わなければ競争に負けてしまうことから、賃金やお給料はなかなか上がらないのが実情です。

それ以外に若い人を中心に、不景気が長かったので、以前と比べて節約志向が身についてきているのかもしれません。モノを買うにしても以前は新品を買うのが当たり前でしたが、今は中古品でもOKという人が多いためか、オークションでモノを買う人が増えているようです。オークションだと割安でモノを買えるので、ムダにお金を使う機会が減って物価の上昇に貢献できていない部分があるのかもしれません。

物価水準2%になれば幸せになれる?

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物価は暮らしと深く関係する指標ではありますが、数値目標を定めてそれを達成するまで政策を続けるという考えには多少疑問を感じる部分はあります。海外の先進国と日本とでは事情が違う点も多々あります。例えば日本では世界で最も少子高齢化が進んでいる国で、消費の中心となる若い人の人口も減っていて、賃金やお給料の水準も高くはありません。こうした事情も踏まえて政策目標を議論しても良いのではないでしょうか。

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